メイクアメリカグレイトアゲイン

アメリカ大統領選後の状況について、日本のニュースサイトに書かれているニュースや、そこに寄せられている数々のコメントを読むけれど、状況がうまく伝わっていないなって思う。ここに居なくてはわからない感覚なのかもしれないとも思う。

次期大統領に選ばれたT氏は、選挙戦で、多くの人々を傷つけました。アメリカをより分断しました。白人以外の人種に対して暴言を吐き、欺き、自分の支持者達を、自分の兵隊のように仕立てました。

ヒラリーは、T氏の批判はしたけれど、人種を分断し、一部の人々を攻撃するような言動はしていません(T氏からの攻撃の反動で失言をした事はあったけれど)。基本、厳しい言葉は、対、T氏にだけです。

一部の人種達に対して、暴言してもいい、攻撃してもいい、と受け取った彼の支持者達の一部は、これぞチャンス!とばかり、声を上げ、いじめを始めました。そして、この選挙結果を得て、それは収まるどころか、一般市民に、特に、子供達に広がっています。学校へ行くと、教師やクラスメートから、 ”国から放り出される準備は出来ているか”と詰め寄られます。見えない未来を案じ、すでに恐怖に怯えている心に、それが襲いかかって来ます。憎しみあふれた落書きも増えました。

ロサンゼルスやニューヨークの大部分の人々はT氏を支持していませんでした。ほとんどの人々が、選挙戦での彼の行動を、ジョークのように(テレビのコメディ番組を観ているように)眺めていました。まさか、彼が大統領に選ばれるなんて夢にも思っていなかったのです。

”憎しみをアメリカに広めた人物の象徴”となったT氏の名前がついたビルやマンションに住んでいる事は、一部の人々にとっては苦しみであり、恥です。どんな形であれ、彼の支持をするわけにはいかないのです。(マー君さんが夢中で否定したのもそのためでしょう。人種の坩堝であるチームの中で孤立しないためにも、それはきちんと宣言しなくてはならない事であったのだと思います。)

一部の人種をアメリカから追い出す事を支持者達に公約したT氏。日本にいらっしゃる方にはこの感覚はわからないかと思いますが、朝起きたら突然、家にママとパパがいなかったらどうしよう、と。子供達の不安は深刻です。

そして、すでにそんな状態のその上に、T氏は、自分のホワイトハウスの首席戦略官(片腕)に、スティーブ バノンという男を選びました。その人物は、T氏の選挙キャンペーンでの毒々しい戦略を作り上げた主要スタッフであり、人種差別発言を繰り返すインターネットニュースサイトのエグゼクティブであり、強烈な反ユダヤ主義であり、白人至上主義者のトップに近い人物です。妻(今は元妻)へのDVと脅しで裁判沙汰になった過去もあります。

私はT氏の”メイク アメリカ グレイト アゲイン”というスローガンを甘く見ていました。アメリカの人々の大半が、それをシンプルな、もう一度アメリカを偉大に!だと思っていたのでは?しかし、私は、腹の底から感じます。実はそのスローガンは、”アメリカを再び白人至上国(白人だけの国)に戻す”だったのでは?と。バノンという人物は、今、アメリカを戦々恐々とさせています。右も左も真ん中も、皆、息をひそめて動向を見守っています。私も、です。”アメリカは今までもグレイとだったし、今も、この先もずっとグレイトよ”。選挙戦中にヒラリーは言っていました。しかし、その”グレイト”にはもっと深く、恐ろしい意味があったのかもしれません。T氏は自分の選挙戦を”これはキャンペーンではなくムーブメントだ。”と何度も強調していました。その意味が、今、ようやくわかったように気がします。

日本でも数々の見方があるようですが、選挙の結果を受け取ってそのまま静かにするのが民主主義ではありません。その結果により、人々が怯え、眠れる夜を過ごし続けなければならないのなら、立ち上がり声を上げるべきです(それも含めて民主主義です)。静かに丸め込まれるわけには行かないのです。声をあげる自由と権利!こそがこの国の力です。私はここで動向を静かに見守っている事しか出来ないけれど、絶望の淵に立たされている人々の代表として、毎晩のように通りに繰り出してプロテストしている人々の勇気を称えます。

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